厚沢部文化遺産調査プロジェクト

北海道厚沢部町の文化遺産や歴史、自然について紹介します。

俄虫鉱山トロッコ軌道

厚沢部町上里には意養川を挟んで西側に俄虫鉱山、東側に意養鉱山があります。意養鉱山は火薬庫跡をはじめ、比較的鉱山遺構がわかりやすく残されていますが、俄虫鉱山は明瞭な遺構が確認できませんでした。今回は、字滝野にお住まいのKさんから「子どもの頃に俄虫鉱山のトロッコ軌道がまだあった」というお話を聞き、現地に案内していただきました。

幅5mの溝が延々と続く

俄虫鉱山麓の畑から鉱山側の斜面にまっすぐトロッコ軌道がのびていました。幅約5m、深いところで1.5mほどあります。

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俄虫鉱山トロッコ軌道

林道のようにつづら折れに上がっていくのかと思っていましたが、20度以上の急斜面を直登していました。おそらく、ケーブルカー的なもので、斜面の縦断面がなるべく直線になるように、縦断ラインが背斜風になっているところを削るので溝状になるようです。逆に谷地形は埋め立てているようです。

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俄虫鉱山トロッコ軌道跡(上の方)

昭和23年米軍撮影航空写真にはかなり明瞭に軌道が写っています。

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昭和23年米軍撮影航空写真に見る軌道跡

今回踏査のGPS軌跡は、航空写真の軌道跡と若干ずれていますが、おおむね航空写真にみえる道路状の部分を確認したものと思います。

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踏査ルート(昭和23年米軍撮影航空写真)

ロッコ軌道の行き先は?

今回の踏査でどうしてもわからなかったのが、トロッコ軌道の終点(あるいは始点)、つまり採掘現場の位置です。この軌道は、俄虫鉱山の第1現場、第2現場と称される採掘場からの搬出入に利用されたと思われますが、これまでの踏査でも採掘現場を確認することはできませんでした。前出のKさんは「採掘現場は山の反対側」ということなので、もう少し探索範囲を広げていきたいと思います。


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