フォトグラメトリやiPhone LiDARによって取得した三次元データから体積を計測する方法を紹介します。
三上超順力試之石と祟りの伝説
「三上超順力試之石」は厚沢部町字城丘史跡館城跡内にある丸石です。次のような話が伝わっています。
かつて山田某という者が、城跡にあったこの石を家に持ち帰り、力試しに用いていたところ、妻が病気になるなど不幸が続きました。そのため、厚沢部町館町の正定寺に安置されていました。石は長く寺にありましたが、昭和43年に、開道百年・館城百年の記念として正定寺境内から館城内へ移設されました。(『南北海道の文化財』を参考)
力試之石は、館城築城の際に建物の礎石として持ち込まれた礫と考えられます。力試之石には、柱当りのような痕跡もみられることから、実際に礎石として使われていた可能性もあります。石材は安山岩で、鶉川中流域(木間内から稲倉石)の川原に多く見られるものです。
どのくらい重いのか
何度か持ち上げることを試みましたが、一人では全く持ち上がる気配がなく、また、手がかりが少ないので、大勢で持ち上げるのも難しいのです。ちなみに、3人がかりでも私は持ち上げることができませんでした。感覚的には軽く100kgは超えていそうです。
Scaniverseで計測
iPad LiDARで計測して三次元データを出力します。今回はScaniverseを使用しました。概ねよくスキャンできたと思います。
幾何補正
ScaniverseからOBJ形式でエクスポートし、Cloudcomapreで開きます。スタッフを写し込んでいるので、これを利用して幾何補正します。
ツール→登録→位置合わせ
スタッフ交点左下を原点(0,0)として、左上を(0,1)、右上を(1,1)、右下を(1,0)とします。Z座標は0にします。
切り抜き
不要な箇所を切り抜きます。 ハサミアイコン(分割・抽出)をクリックして分割ツールを起動します。
不要な部分を切り抜きました。
体積を計算する
ツール→ボリューム→2.5Dボリュームを計算
Volume calculationウインドウが開きます。 基本的にはデフォルトで良いはずですが、設定は次のとおりです。
- Source(Ground/Before) = Constant
- Source(Ceil/After) = Vertices.segmented
- step = 0.001(1mmメッシュで計算)
- projection.dir = z
- cell hight = average height
ResultsのVolumeが体積です。 0.03 = 0.03㎥なので、力試之石の体積は約30リットルとなります。
30リットルの安山岩の重さ
体積が算出できたので、安山岩の比重を乗じます。 安山岩の比重は倉敷市自然史博物館さんのサイトを参考にしますと「2.7~3.0g/cm3程度」とありますので、2.8g/cm3を使用すると30×2.8=84kgとなります。
え、そんなに軽いの?と思いますが、確かに見た目は18リットルのポリタンクよりちょっと大きい感じなので、大きく外れていることはなさそうです。 まったく持ち上がる気がしない力試之石ですが、ちょっと浮かすぐらいなら、私でもできるはずの重さなんですね・・・
この 記事 は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。