食事づくりを考える
冠婚葬祭での食事は欠かせない要素で、行事に伴って行われる共食・会食は民俗学では重要な要素となっています。地域の中で行われる行事のうち、 結婚式やお葬式は地域をあげて一大行事として行われるものとなっています。多くの場合、地域の行事は男女が役割分担によって分けられ、それぞれ異なる役目を担います。女性が中心となって行われる作業のうち、大きな者は食事ですが、地域のみんなで食事を作ることが地域のつながりを保つ重要な意義を持っています。
地域の行事と役割分担
地域の行事では、組とか班のまとまりでお手伝いに出ることが多いものです。葬儀の場合、男性は装具、飛脚、帳場など、女性は、食事づくり、着物を縫うなどの役割を果たします。男女別の役割分担だけではなく、誰がどの役割を果たすかは、それぞれの個性や年齢などによって暗黙にを決まっていることが多いものです。
たとえば、煮しめは年配の女性が担当することが多く、若い女性は買い出しとか簡単な作業を任されながら、仕事を覚えていきます。
厚沢部町では「鍋船頭」と呼ばれる方が料理を仕切ることになるそうです(会場からご教示)。
地域の行事と料理
地域の行事で作られる料理には、煮しめ、きゅうりもみ、きんぴらごぼうが多いようです。これは、一度にたくさん作れるということのほかに、たくさん作ったほうが美味しいものが選ばれているようです。行事で作られる料理には、次のようなものがあります。
厚沢部町での葬儀(会場からの意見)
- 買い物帳は店に置きっぱなしにして、ツケ買いする都度、店側が記入していく。
- 葬儀が終わった段階で、買い物帳とともに請求書が帳場に届く。
- 買い物帳は納品書的な役割
- 買い物は女、支払いは男が行う。
- 葬儀に関わることは必ず二人で行くことになっているので、飛脚はもちろん、支払いも二人で行くように言われる(石井も経験あり)。
- 鍋船頭になる者は、仮通夜のときに決められるので、そのときに集まった人たちで打ち合わせして、出席人数を見積もって、料理の量や内容を決める。
- 火葬場でついていく人の食事量の予想が難しいが、今はコンビニ弁当になっている。
行事食に伴う小商い
高知県中土佐町久礼地区では女性も現金収入求めて働くことが多い土地柄でした。漁師町なので、男性が出漁して不在なことが多く、その間女性は縫製工場、加工場、木材運搬などの賃金取りをすることが習慣化していました。喫茶店でモーニングをする習慣のある地域で、年配の女性がお気に入りの喫茶店で連れ立ってモーニングをとるのが当たり前に見られます。働く女性の中には喫茶店経営に乗り出す方も多いようです。
冠婚葬祭で料理を上手にする人は「料理人さん」と呼ばれていましたが、徐々にビジネス化して「仕出し」屋としてお金をとるようになりました。高知での料理人は皿鉢を組めることが重要です。料理人さんは皿鉢を上手に組めることでセミプロ化していくようです。皿鉢だけでなく、地元のスーパーでお惣菜を出すケース場合もあります。
厚沢部の葬儀(会場からの意見)
- 以前は、厚沢部でも告別式の後に一升瓶を立てて宴会のような後引きを行っていたが、今はそういうことは少なくなった。
- 葬儀の後始末がなかなか終わらないので、忌中引きが長引くととても大変。
- かつては忌中引きをそれは盛大にやったものだ。
- 遺族は寝てないから長居されると大変。
地蔵講やカワシモサマ
地蔵講や観音講などの女性のための行事では、女性が各家から一人参加することが習わしで、お嫁さんが来て、しばらくするとお嫁さんがお姑さんと交代することが多いようです。地蔵の真言を唱えて、終わるとお茶とお菓子を食べながら世間話や愚痴などを言い合います。
カワシモサマは妊婦さんに運んでもらう習わしです。カワシモサマのお祭りでは地域の歴史が語られます。